「破壊なくして創造なし、まさに時は来た!」
今まで培ってきた何かを壊すことは、とても勇気のいる作業だ。それはある意味、これまでの自分への否定であり、一度壊したものは、また同じに修復できるとも限らない。しかし、その壊す作業を行わなければ、新しい何かは決して生まれることはないのだ。
センチグラムとして新たな旅路へと踏み出した彼らの最初の道のりは緊張と戸惑いの中のスタートだった。前身のバンドより、よりシンプルに歌を聴かせるバンドへと変貌と遂げたセンチグラム。初戦となるLIVESTAR’s FESでは、3ピースならでは、繊細さとリアルな情景を伝えることには成功したものの、この形態での初ライヴという迷いと不安をどこか感じさせてしまうものだった。
あれから2ヶ月……。彼らのホームグラウンドでもある吉祥寺プラネットKの扉を開けた瞬間に飛び込んできたのは、いきいきとした3人の表情だった。サポートギタリストにAJISAIの須江を迎えたステージ。オープニングナンバーの「宛先のない詞」のその最初の一音を聴いただけで、彼らが選んだ選択が間違いのなかったことに、会場にいる誰もが気がついたはずだ。丹(ds)の小気味よいビートに橋川(b)のシンプルながらもツボを得たフレーズ、そこに彩りを乗せていく須江のギター。知らず知らずのうちに身体を揺らしてしまうバンドとしてのグルーヴがそこにあった。
そして何よりの変化は、ヴォーカル松野の歌いっぷりだ。安心してギターを任せられる存在を見つけたことによって、歌うことのみに集中できる環境を手にいれた松野。それは情感を伝える趣であるセンチグラムのサウンドを何倍にも膨らませることに成功した。
また、このことは松野自身が弾くギターにもよい影響を与えているようだ。これまでの自分たちを見直し、新たなる可能性を自らの手で見つけ出す。簡単そうに見えて、奥が深いその作業は、出来上がったバンドというパズルをまた別の形にするくらい困難なことだ。彼らもここに辿り着くまでに、すれ違いや周り道を何回も繰り返したことだろう。
今回特に印象に残ったのは、ラストに演奏された「もしもし」。今までなら綺麗に歌うことを意識していたであろう松野が、声がかすれることも気にせずに感情をあらわに叫ぶ姿は、彼の視線の先にある誰かの姿さえ見えてしまうかのようなリアルを感じた。すべてのプレッシャーを跳ね除け、完全なるバンド形態へとトランスフォームしたセンチグラム、彼らの行く末に見える大きな舞台がもうすぐそこにあるような気がした。そして今回のライヴは、そこへ向かうためのスタート時点の確認にも思えた。 〈取材:西沢八月/撮影:東京神父〉

